里山子ども料理教室
〜檜原村産の有機栽培小麦でうどんをつくる〜

小麦、黍(きび)、稗(ひえ)、粟(あわ)、高黍(たかきび)……。檜原村では昔からたくさんの穀物が育てられてきました。こうした穀物をどうやって食べていたのでしょう? 藤倉小学校卒業したふたりの先輩がたに教えてもらいながら、地粉でのうどんづくりにチャレンジしました。

まずは小麦を挽いて、粉にするところから。

檜原村に伝わる食文化を体験する料理教室。この日は、近くの畑で育てられた在来種の小麦を使って、うどんをつくりました。

教えてくれたのは檜原村育ちの長田さんと猪股さん。ふたりはおよそ60年前にこの小学校で学んだ卒業生です。

「今日はうどんを、粉をつくることからやっていきます。さて、みなさんにクイズです。うどんはなにからできているでしょう?」

目の前の机には、檜原村の畑で栽培された黍(きび)、稗(ひえ)、粟(あわ)、高黍(たかきび)。始めて見る穂付きの穀物を前に子どもたちは首をかしげます。

「正解は小麦です。檜原村は山が多くて水田がないのでお米がつくれません。畑では主に小麦を育てて、うどんを打って食べていました」

長田さんと猪股さんが小学生だったころは電気もガスもなく、藤倉集落の人たちはほぼ自給自足の生活を送っていました。平らな土地がほとんどないため米がつくれないので、主食はうどん。自分たちで栽培した小麦を製粉して、うどんをつくって食べていたといいます。

「どれが小麦だかわかりますか? どんなふうに実が入っているか探してみてください」

と言われると、子どもたちは小麦から実を取り出そうとしますが、一つひとつを取り出すのはなかなかたいへん。

「電気のない時代、どうやって実を取り出していたか見てみましょう」と、長田さんと猪股さんは古い機械を指し示します。その先にあるのは足踏み脱穀機です。

穂を当てて回すと、ぱちぱちと音をたてて、実が外れました。
「やってみたーい!」と子どもたちはおおはしゃぎ。

本来ならばこのあと、唐箕(とうみ)という道具でもみ殻と実とをわけていきますが、この日は割愛。あらかじめ選別しておいた実を製粉していきます。昔は石臼で挽いていましたが、今回は電動石臼機を使用。あっという間に粉になりました。

続いて、目の細かいザルに粉を入れてふるいにかけることで粒子を細かくしていきます。

今回は自家栽培した小麦粉だけでは足りないので、半分は市販の小麦粉を使用。ボールに入れた半分が檜原村産で、半分は群馬県産。見比べると、色が全然違います。自家製粉した小麦粉は表皮を残して挽いているので、市販のものよりも茶色いという発見がありました。

ぎゅっぎゅっと体重をかけて、うどん打ち。

いよいようどんの生地をつくっていきます。
全部で500グラムの小麦粉に、塩20グラムを溶かしたぬるま湯230ccを少しずついれていきます。

塩水は少量ずつ、だんだんと入れながら。みんなでやさしくかき回していくうちに、最初はさらさら、ほろほろとしていたものが徐々に集まってきて、ひとつの塊になっていきます。

「最初は柔らかくて、べとべとしていたんだけど、やっていったらかたくなって、手に付かなくなったの」と参加者の小学一年生女子が興奮気味に報告してくれました。

塊になったあとは、力をいれて練りあげます。
「ちゃんとおかくまり(正座)すると、力が入るからね」長田さんが指導します。
「耳たぶの柔らかさになるまで練っていきましょう」

柔らかくなったらビニール袋に入れて、足踏み工程を始めます。
足のかかとを使って体重をかけながら踏んでいくことで、腰の強いうどんになるといいます。
生地がたいらになったらたたみ直して、再びぎゅっぎゅっと踏む行程を繰り返します。
最後は仲良しふたり組が背中合わせになって、息を合わせてぐるぐる回りながらしっかり踏んでフィニッシュ。その後、20分間、生地を寝かせます。

生地を寝かしている間におかずづくり。
檜原村名産のじゃがいももいれて、ホイル蒸しにします。
20分生地を寝かせたら、いよいようどん打ちです。

この行程では参加者のお母さんたちが大奮闘。
めん棒でぐーっと押しながら巻き付けていき、生地を均一に広げていきます。
これがなかなか難しい作業。
最初は慣れない手つきだったのに、長田さんと猪股さんのデモンストレーションを見て、何回か繰り返していくうちにコツが飲み込めてきたようです。
「みなさん上手ですね」と長田さんと猪股さんがにこにこと見守ります。

均等に広がったら、蛇腹に折って、3ミリ幅に切っていきます。

校庭に用意した薪のかまどでぐつぐつ沸騰しているお湯の中へ切り立てのうどんを投入して待つこと10分。
おそばのような色のうどんができあがりました。

校庭のテーブルにうどんとおかずを並べて、みんなでいただきます。
弾力のあるうどんを噛みしめると、小麦の風味が力強く広がりました。

「どうですか?」
「自分でつくるとおいしいね」

おとなも子どもも夢中になっていただきました。

檜原村で昔から食べられてきた料理をみんなでつくる「里山子ども料理教室」はこれからも開催予定。檜原村にゆかりのあるかたがたのお話を聞きながら、季節ごとにおいしい里山料理を手と舌で味わってみませんか。

2022年9月10日
文責:岡田カーヤ
写真:在本彌生