石積み学校in檜原村
~みんなで作り上げる! 斜面畑の石積み再生体験~

傾斜地の畑や土地を活用するために作られ、利用されてきた石積み。その技術を学びながら崩れかけた石積みを修復することで技術を継承、石積みのある風景を残していきたい。そうした思いで開催されている石積み学校in檜原村に多くの方々が参加しました。

崩れかけた石積みを直して技術を継承、石積みのある風景を残していく。

深い山間にある檜原村では、石積みをして平らな土地をつくり、畑として活用してきました。石積みは生きるために必要な技術だったのですが、コンクリートの普及によって技術が途絶えかけ、崩れかけた石積みが増えてきました。

コンクリートやモルタルを使わず、地域の石だけで石垣をつくる石積みの価値と技術を伝えるため、ワークショップや講演を全国で行っている石積み学校が檜原村でも開催されました。

檜原村では6回目の開催となる今回の石積み学校では、藤倉校舎の下、北秋川へと続く傾斜地の畑につくられた石積みを修復します。急な斜面をゆっくり、ゆっくり、十数名の参加者のみなさんと一緒におりていきます。

修復する石積みへと到着しました。
およそ50年前につくられたこちらの石積み、石の間から土が流れ出たり、植物の根が張ったりして、今にも崩れそうになっています。

「まずは古くなった石を外していきましょう。外した石が、新しい石積みの材料となるので、大きさで分別していきます」
と言うのは、東京工業大学准教授で、石積み学校代表理事の真田純子さん。

今回の講師は真田さんと、石積み学校理事の金子玲大さん、そして檜原村石積み合宿実行委員会、ひのはら放課後クラブを運営する細貝和寛さんの3人が務めます。

計画では週末の2日間で行う予定でしたが、翌日が雨予報だったため、急遽、一日ですべての行程を終わらせることになりました。まずは雨よけのブルーシートを設置して、古い石垣をはずす作業から始めます。

「石積みをするのが始めてという人は……」と真田さんが質問すると、参加者の半分以上の人の手がいっせいに上がりました。

さまざまな農具を使いながら、てこの原理で石を外していきます。

石積みは、基本的に表面に見えている「積み石」と土の中で積み石を固定するいくつもの小さな「ぐり石」で構成されています。

けれども積み石を取り除いていくと、
「ぐり石がほとんど入っていません」と驚いた様子の真田さん。

そのため、急な斜面をさらに下って、川原でぐり石を採取することになりました。

「本当はこぶし大のものがいいけれど、たくさん拾わないといけないので、少し大きめでもいいです。こういう作業は本来ないのですけれどね。ぐり石なしで積み直しても、またすぐ崩れてしまうので多めに集めましょう」

そうして集めた石はかなりの重さになるので、一人で持って斜面を上るのはかなりの重労働。昔の人たちは、こんなたいへんな思いをして石を運んでいたのかと想像しながら、参加者のみなさんでバケツリレーのように石を運搬していきました。

ぐり石を集め終えると、石の取り外し作業が終わりかけていました。

石が外された土壁を見た真田さん、
「もうちょっと奥行きを作りましょう」
と、さらに土を掘り進めることを決めました。

石積みでは、表面の積み石の面積よりも、土の中に埋まっている奥行きのほうが長いほうがしっかりと石が積まれ安定するのだそう。

「土を掘りおえたら、6割終わったも同然」という真田さんの言葉とともに、いよいよ石積みが始まります。

「一ぐり、二石、三に積み」
石工さんの間で伝えられていたこの言葉どおり、石積みで大切なことは、ぐり石をしっかり詰めて固定すること。

ぐり石を入れることで石積み背後の土の中の水を流れやすくして、積み石が動かなくなるのだといいます。

石積み三箇条は
その1)
重心を奥にかけて積んでいく。

その2)
積み石をぐり石で固定する。

その3)
2つ以上のぐり石にかかるように置く。

こと。

そうしてみんなで積んでいった石積みがこちら。

「できました。これで十数年は崩れないでしょう。ただし、コンクリートの擁壁と違い、メンテナンスは必要です。根が生えてくると耐水機能が弱くなるので、根が張りそうだったら掻き出すといいでしょう」と真田さん。

「暮らしによって石積みのスタイルは変わってきます。絶対こうじゃないといけないという積み方はありません。でも、基本のやりかたさえわかれば、女性だってできる仕事なのです」

ちなみに、この日の昼食は羽釜で炊いたごはん、ししなべ、檜原村の伝統野菜「おいねのつる芋」の煮っ転がしなどでした。

檜原村の畑を支える石積みを修復して、畑の食材でつくられた昼食を食べる。
そんな繋がりを感じられた石積み学校でした。

2020年9月19日
文責:岡田カーヤ
写真:在本彌生

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    10月15日(土)、16日(日)の2日間にわたり、合同会社ともすび、檜原村石積み合宿実行委員会共催の元、一般社団法人「石積み学校」の金子玲央先生を講師に迎え、「石積み学校」が開催されました。さとやま学校・東京が借り受けている斜面畑の崩れた石垣の改修をしました。